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在りし日の唄

プレイ時間 CDレス
プレイ
CG枚数 H回想 ボイス 評価 オススメ
点数
7時間30分程度★ 184枚※ 6枠 無し 7点 6点

★★攻略順 一未 → 千帆 → 玉藻 → 菻
初回プレイ、キャラシナリオクリア後のオマケHを入れて3時間弱。
2週目 1時間30分程度。
3週目2時間程度。
4週目20分。
オマケシナリオ2本に40分程度。

※細かい差分を全て含むので、実際はこの3分の1くらいの枚数。


★事前に期待していたもの
個人的に傑作判定の「果てしなく青いこの空の下で」のスタッフが関係していると聞いたので。
前作が、まあそれなりの作品だったので、更にレベルアップを期待して購入。

システム  足回りはシンプルですが、特に不満はありません。
 必要なものは全て揃っていると思います。

 操作はメッセージウィンドウ上のアイコンを使って行います。
 そのアイコンの下に、アイコン操作に対応したキーボードのボタン番号まで付いてます。
 キーボードとマウス、どちらでも等しい操作が可能。

 アイコンで操作可能な項目は

 オートモード 開始・終了
 セーブ・ロード(30スロット)
 クイックセーブ&ロード(1スロット)
 既読スキップの開始・終了
 バックログの読み送りと巻き戻し
 環境設定
 メッセージウィンドウ消去

 コンフィグメニューで調節できる環境設定は

 フルスクリーン・ウィンドウモード切替
 オートモード速度調節(4段階)
 メッセージ速度調節(4段階)
 BGM・効果音 音量調整(アナログバー)
 画面効果の On/Off
 雨のエフェクトの On/Off
 セーブ・ロード画面へのジャンプ
 ゲーム中断・タイトルへ戻る等の操作

 以上になります。
 セーブ・ロードのデータには、サムネイルとゲーム上の章、データを残した日時、がそれ
ぞれ記録されるので、使い勝手は宜しいです。ただ、コンフィグメニューからセーブロード
やタイトルへ戻る、ゲームの中断を選択した際、その確認画面が小さく表示されてしまうの
で、やや見辛かったくらいが不満です。 
音楽・CV  音楽は、非常に良質です。

 一言で表現すれば、趣味が良い、ですね。
 全体に作品世界とマッチした美しく、やや物悲しい曲が多いのが特徴でしょうか。
 キーボードサンプリングのみならず、ギター(生ギターかサンプリングかややはっきりしま
せんが)も効果的に使用しています。サンプリングもピアノのみならず、オルガン、ストリン
グス、メロトロンといった使い分けが細かくなされており、実に緻密なアレンジがされていま
す。
 作風は、そこはかとなく和風な匂いのする曲から、スムーズジャズに通じる軽快な曲、
そしてニュー・エイジ・ミュージック風の綺麗な曲と、多彩に揃っています。何といっても、
キーボードサンプリングに頼り勝ちになる傾向の強いゲーム音楽で、弦楽器をこれだけ巧
みに使うセンスは素晴らしいですね。
 主題歌も地味ですが、歌詞は何気に良いです。主題歌の使い方もツボを得ていました。
 単なるED用使い捨ての曲では無いですな。
 音楽として良かったゲームは、本年度は「CROSS†CHANNEL」くらいかな、と考えてい
ましたが、恐らくベストなゲームBGMはこの作品になると思ってます。音楽を聴くだけでこ
のゲームを購入する価値はあると言い切ってしまいます。
 また、オマケモードで曲を聞く時、曲ごとにイメージCGが表示されるという細かいサービ
スも大変嬉しいですね。

 CVは最近では珍しく、無しです。前作の「AQUAS」でもCVレスでした。
 基本的に、私はCVは在っても無くても、作品さえ良ければ問題ないと考えています。こ
の「在りし日の歌」の場合、余分な声が入らないことで、素晴らしいBGMを初めとして、考
えられた音の演出がクローズアップされているので、却って良かったと思います。また、
CV無しの方が、この独特の雰囲気のあるゲームに似合っているでしょう。
CG・立ち絵   絵的には、最近の流行には希求力が無いと思います。それが悪い事だとは全然思って
はいませんが。
 非常に地味な絵柄で、良く言えば渋い感じですな。私的にはドギツいキャラデザインより
も好感が持てます。
 一般受けはしないでしょうけどね・・・・・。
 立ち絵は、ポーズ・パターンと共に決して多くはありません。が、ちゃんと工夫をしていま
す。
  ポーズに関しては、1つに固定せず、感情−喜怒哀楽−に合わせて、しっかりと変えて
います。更に表情も大仰に変化はさせませんが、目線を変えたり、小さく顔のパーツを動
かしたりする事で豊富な表情に見せる事に成功しています。
 ただ赤面させるだけの演出に頼らない、目立たないけれどしっかりした立ち絵になって
いると思います。
 1枚絵CGに関しては、落ち着いた塗りが作品の雰囲気に良くマッチしています。少々配
色がキツ目な感じも受けますが、総じて塗りは安定しているでしょう。
 絵柄はいまひとつ安定していない感じです。特にロングショットの構図と顔アップでの表
情の格差が激しいように感じます。気合の入っている絵と、少し気抜けしたCGの格差が
あるようにも見えます。
 これは、シーンによって目の形が丸型とアーモンド型に分かれる癖のようなものがあり、
為に、顔が少し違って見えてしまう傾向があるように感じます。後、「千帆」が口を開けて
「あ〜ん」のおねだりをしているシーンの大口開けCGは、流石にちょっと違和感がありまし
た。
 それから、液体の描き方が少し硬い感じがします。雨に濡れるシーン然り、精液が顔に
掛かるシーン然り、涙然り、と。
 ですが、ハッとするような色気を感じるCGが結構あって、全体としては好きです。

 蛇足ですが、動物の描き方がかなりリアルで、しかも可愛らしいですね。
 更に、オマケストーリーで出てくるコミカルな水彩画タッチのデフォルメCGは凄く良い。ホ
ンワカしていて、心和みます。本音を言うと、本編のリアルCGよりもお気に入りです。 
エロ   非常に薄いです。
 本番は各ヒロイン、本編で終盤に1回のみ。
 尺は短いし、濃厚な描写もありません。
 特殊Hも一切無し。他に、手コキとオナニー描写が1回ずつ。各ヒロインのエンディングを
見ると閲覧可能になる、オマケH(「菻」除く)は、夢オチが殆ど。全て放尿シーンが入って
いるのが拘りかな。
 「菻」のHシーンがCGの感じが淡く幻想的で一番気合が入ってると思いますが、これで
も実用性は極低ですね。
 一切期待はしない方が良いでしょう。又、このゲームの雰囲気にも濃厚なエロスは似合
わないと思うので、これで良かったとは思います。
シナリオ  メーカーさんのコピーに、こうあります。

 「これはからっぽだった僕のひどくささやかで、とりとめのない物語」

 これがシナリオ概略の全てを端的に説明しています。

 とある田舎町に住む、主人公「日比野 トモル」は自分が本当の自分ではないような、
名状し難い空白を自分自身に常に漠然と感じていた。
 そんなボーッとした主人公が、春休みに遭遇するちょっとした事件が語られる。

 これが基本のストーリーですね。
 まるで昭和の御世にタイムスリップしたような、鄙びた感じの街で、主人公が自分の空
虚を埋める存在を見つけるまでの日常が、淡々と描かれる。
 骨子はこれだけです。物語は春休みの短い早春に限られ、5話構成になっています。
 しかも、非常に短い物語です。
 この点は良くもあり悪くも有ります。詳細は「総評」にて。

 伝奇的な要素を背負った、自称「狐憑き」であるアルビノの少女「玉藻」が、扱いから
もシナリオの長さからもメインヒロインなのは明白です。が、伝奇というアクティブな要素
を読ませるお話ではなく、柳田国男氏の「遠野物語」を読むように素朴な印象のある物
語になっています。 
 全体として、起伏が少なく、恋愛モノとも言っていいか微妙なくらい、閑静にストーリー
が運びます。主人公とヒロインが惹かれ合う過程の描写は希薄ですね。そもそも全ヒロ
インがデフォルトで主人公に惚れていますが、主人公は鈍いというよりも、超絶にマイペ
ースなので、その性格も手伝い恋愛物語としては全然盛り上がりません。
 各ヒロインの抱える葛藤、家族愛、親子の絆、住む場所とは何か、といったテーマが物
語りに盛り込まれていますが、これもあまり掘り下げて書かれてもいません。
 エンディングもこういった展開を反映して、結構淡白なモノとなっています。

 こう列挙していると、平板な盛り上がりの無いストーリーが一貫して垂れ流しで終了。
 このような印象を受けるかもしれません。実際にシナリオだけを眺めると、そう言われて
も不思議はありません。
 足りないボリュームに、書き切られていない内容。盛り上がらずに進むお話と。しかし、
このゲームの本質はストーリー自体ではなく、別の部分に多分に含まれると思います。
総評  ゲームの冒頭に登場するので、すぐに元ネタが解ると思いますが、このゲームのタイトル
である「在りし日の歌」は30歳で夭折した詩人、「中原中也」氏の詩集「在りし日の歌」から
採られています。

 5話に分かれた、各章のタイトルにも、同詩集からの詩のタイトルが付けられるといった拘
り。
 私的に「中原中也」氏の詩は、そのロマンチシズムよりも、読後の余韻を評価すべきと考
えていましたが、まさにこのゲームのポイントが、その余韻にあると思います。
 余韻というよりも、雰囲気、空気と言い換えた方が適当かもしれません。このゲームの良
さは、ストーリー運びではなく、全体に流れる感覚にあると思うのです。
 淡々としたお話の何処かに流れる鄙びた空虚さ。
 時折描写される、日常に潜む小さな闇の部分=非日常。
 例えるなら、田舎の古い家を訪ねた時、薄暗い部屋に入った瞬間に覚える、ヒヤリとした
感覚。
 不気味というよりも、常に傍にあるのに普段は意識しない闇の存在。ベタベタしない親子
や家族の関係。
 少年特有の虚無感。
 故郷と自分の居場所である居住空間の捉え方。こういった要素が、根掘り葉掘り書かれ
ず、プレイヤーに投げかけるように散りばめられています。このキャスティングが、イコール
描写不足、消化しきれない伏線、説明不足といったネガティブな要素にも等量に繋がるん
ですけどね。
 やはり、賞賛しておいて何ですが、もう少し丁寧に物語を肉付けして欲しかったとは思い
ます。特に、シナリオの格となる片割れの存在「菻」のシナリオはスキップを使うと20分も
掛からずに終了してしまいます。
 彼女の正体についても、暗喩はあれど、しっかりと説明はされていません。これは「玉藻」
にも同様に当てはまります。
 ここをもう少ししっかり書いてくれれば、もっと良い読み物になったと思うのですが。
 しかし、単純にボリューム不足が即致命傷にならず、雰囲気の創造に一役買っていると
いう点は素直に評価したいのが個人的意見。

 それから、アイキャチ等の細かい演出が巧みです。特別アニメーションを使うでもない、
単に文字を動かすだけのアイ・キャッチなんですが、音楽とのタイミングが絶妙に加え、シ
ンプルなのに面白い。シーンが終了する節目にオートセーブされるんですけど、その間の
取り方も上手い。
 派手なビジュアルやアニメーションに頼らずとも良い演出が出来る好例だと思います。
 傑作でもなく、大作でもありませんが、良い作品であるのは間違いない。小粒でこじんま
りと纏まってしまっているのが無念だ。 
オススメ度  地味な絵柄に、地味なストーリー。萌え要素は皆無。
 エロ度合いも低い。

 と、最近のトレンドとして、萌えゲーと抜きゲーの二極化が進んでいる中では、話題性
には乏しい作品ですね。
 が、あまり見ることが出来ない、余韻と行間を心地よく堪能できたゲームです。私的に
「在りし日の歌」の作者である「中原中也」氏は浪漫のある詩よりも、ノスタルジックな風
景を見せてくれる詩人と考えています。
 その感覚がこのゲームで、同じ事を考えている人もいるのかなあ、と思えそこはかとな
く嬉しかった。
 何ともいえない、枯れて詫びしさのある「物語」−恋愛物語ではなく−を読めたゲーム
でした。
 個人的にはかなり気に入りました。ただ、もう少し日常描写やキャラ同士の会話を書い
てボリュームが欲しかった。どうしても小粒な感は否めないのが残念です。この不満がな
ければもう1点上乗せなんですが、個人的には7点。
 音楽は最高ですので、その分プラスして7.5点でも良いかな。

 ありきたりの萌えゲーや恋愛モノに飽きた人。心地良い読後の感覚に浸りたい人等に
はオススメしておきます。しかし、萌え属性無しやエロ薄が駄目な人には全くオススメ出
来ないので、万人には向かないとも思います。
 一応6点がオススメポイントです。しかし、ストーリーに起伏まで期待される方はマイナス
1点と考えて置いてください
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