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群青の空を越えて

プレイ時間 DVDレス
プレイ
インストール
容量
CG枚数 回想 ボイス 評価
32時間程度 約1.4GB 84枚※ 30枠◆ フル 8点


★初回プレイ12時間弱。後スキップ利用にて各シナリオで3〜6時間。
※差分含まず
◆非18禁シーン及びED回想含む。

★事前に期待していたもの
パケ買い。(中古ですが)戦闘機が登場するミリタリーモノ「らしい」ので。
リアル系ミリタリー+18禁というのはありそうでなかったジャンルなので、どう料理するかに期待

システム  「Paradise Lost」以来、ここのゲーム、というよりもゲームをプレイする回数が減ったので
lightさんのゲームは久々なのですが、以前よりもかなり使い易くなってますね。

 ゲームを楽しむ上での機能はまず問題なく装備しています。
 操作は、画面上端ツールバーからとメッセージウィンドウ下側のConfigから行えます。

 セーブ・ロードは80スロット。クイックセーブ・ロードは10スロット。
 メッセージスキップ・メッセージ送り・戻しはメッセージウィンドウ横のアイコンからも実行
可能。
 ホイールマウスのメッセージ送り・読み返し機能対応。
 バックログの音声再生可能。
 キャラクター別音声On/Off設定可能。Hシーンでの男性(主人公)ボイスのOn/Offは
親切設計だと思います。
 テキストメッセージの表示・非表示自在。(音声再生中の表示・非表示)
 オートモードの速度調整可能。
 メッセージ速度調節可能。(アナログバー)
 BGM・音声・効果音の音量調節(アナログバー)
 フルスクリーン・ウィンドウモード切替可能。
 テキストフォント変更可能。(20種類以上)

 特にゲーム中ストレスは感じませんでした。
 少々OP画面が表示されるのにタイムラグがあるのが気になった程度です。
音楽・CV  オマケのサウンドモードで聞けるのが33曲。バージョンの違いやボーカル曲のショート
バージョンもありますので、実質30曲弱というところです。

 ボーカル曲はハミングを多用したゴスペル調のED曲とおとなし目なバラードっぽいOP
曲です。ED曲はかなり哀愁漂う英詩曲で、結構単体で聞くと良い感じ。OPも同じくです。
 しかし、特にOP曲は作品世界にマッチしているとは言い難い気がします。作品がそれな
りに骨太なのに対して、ソフト過ぎるように思えます。

 他のBGMは、良くも悪くも印象に残りません。使いドコロが間違っているというかシーン
のTPOとBGMが合っていないなあと感じる場面が結構ありました。BGMそのものよりも
そちらの違和感の方が気になりましたね。

 CVに関しては、ヒロイン陣は、殆ど知らない方ばかりでしたが、演技には問題は全く
無いですね。「若菜」「加奈子」「美樹」とどの方も良かったです。
 男性キャラにも脇役にも全てCVありで、主人公にもCVありです。
 普段主人公ボイスはOFFにするプレイをしており、今回も最初主人公の声を聞いた時
「うわ、微妙やなあ」と思い、一旦カットしたのですが、ゲームの質が主人公とシンクロし
て楽しむタイプではなく小説を読むタイプだと思い、再びONにし、直ぐに慣れました。
 Hシーンの男性ボイス以外は全ての音声をONにしたのですが、特に問題を感じること
はなかったです。非常に宜しいかと。
CG・立ち絵  背景は非常に綺麗に描かれています。OHPにも背景CG特集が紹介されているので
参考にすると良いかも。
 一枚絵CGは、パッケージの絵と比べて絵的に遜色はないと思いますが、正直塗りが
微妙ですね。妙にツヤがあるというか光沢が目立つ塗りになっています。
 構図と目線がちょっと不自然というか気になるCGもあるのですが、まあ許容範囲内
ではないかと。
 CG数は決して多くは無いですが、必要だなと思った場面には挿入されますので、CG
が少ないと感じることはなかったですね。

 問題は、立ち絵CGですね。かなーり、パケ絵とはギャップがあります。塗りもお世辞に
も綺麗とは言い難いですし、表情のバリエーションも少な目。そして肝心の表情ですが、
ちょっと酷いなあと思われるパーツが幾つかありました。
 もっとも、ゲームに没頭していくと慣れてしまい気にはならなくなりましたが。
 最初は相当気になるレベルである事請け合いです。
 パッケージのヒロイン「若菜」のイラストはかなりイイ感じだったので、余計にその落差
が目についたのでしょう。

 後は、目玉(かな?)でもある戦闘機のCGムービーですが、これはかなり良い出来で
あると思います。ジェット機大好きなファンの方がどういう判断を下すかは解りませんが、
ハードウェアとしてのジェット戦闘機には何らマニア的魅力を感じない私レベルでは、か
なり格好良く見えました。(ジェット戦闘機の空中戦史には興味津々ですが。)
 しかし、戦闘機のムービーは数が相当少ないんですよね。後述しますが、戦闘機同士
の空中戦の少なさにも直結しています。
 こちらは不満と言うよりも残念です。なまじ数少ないムービーの出来が良いので。
エロ  薄くは無いけど、物凄く濃厚でもない。そんなレベルではないかと。
 キャラクターによっては、シーンは少な目ですが、テキスト表現から、相当ヤリまくりとい
うレベルから、たった1回こっきりですが、複数ラウンド有り、と回数はキャラによってレベ
ルが異なります。

 回数・シュチュも豊富
 「水木 若菜」

 回数多いけど使い回しばっかりとテキスト表現で行為があった事を補完
 「渋沢 美樹」

 シーン1回だけど複数回戦あり
 「日下部 加奈子」「長田 圭子」

 Hもキャラ的立場もオマケか?
 「澤村 夕紀」

 こんなところかと。
 後、寸止めまで行かないお色気シーンのある年増キャラもいます。

 尺は短めですが、まあそれなりではないかと。メインヒロイン扱いの福音か、「若菜」
はかなりエロいですね。他のキャラとの差別化がこのへんで計られているのかと思った
りもします。
シナリオ  主人公「萩野 社」の父親(天才学者)が提唱した経済理論によって、日本の関東地
方で学生を中心とした独立運動が勃発。大まかな「関八州」が独立したのを契機に北海
道をはじめとする各地も自治権を大幅に引き上げ、実質日本が細かく分断される。
 西日本を中心とした「関西軍」と首都圏を覆って独立した「関東軍」の内戦が勃発。
 米・露・欧・中東等の思惑が重なる中、ゲーム開始時点では一応の休戦状態に置かれ
ている。(それでも不正規戦と遭遇戦は発生。要するに国境紛争状態。国際法的には
そもそも戦争とみなされていない状態の模様。)

 という、架空戦記的設定です。日本が分裂した内戦状態。戦力的に劣勢な「関東軍」で
戦力を補うために未成年(18歳以上でしょうけど)の学徒動員的戦闘参加-自主参加で
ある点はかなり嘗ての動員とは異なるが-が推進され、主人公はそこで学生の身分で
はエリート的な実践参加可能なパイロット(作中では一種生徒)として、スゥエーデン製
の戦闘機「サーブJAS39グリペン」を駆る。
 独立運動→内戦 の引き金的人物を父親に持った主人公は、独立運動中に暗殺され
た父親の始めた事に対する責任感から戦闘機パイロットとして命を賭して闘う…。

 正直、設定に無理があると思います。円(\)を中心にした超国家的な経済圏の形成
という前提は、類似例にEUがありますけど、欧州と比べ外交下手なアジア諸国ではそう
簡単に実現するとは思えませんし、仕事柄中国や韓国へ毎年何回も出張しますが、現
地での反日感情を慮った場合も…といったリアルな前提を抜きとしても、一学者の経済
理論から日本が分裂するというのは幾ら架空戦記にしてもリアリティが無さ過ぎであると
思います。

 作中もこの「円経済論」については詳細な説明はありません。まあ、このあたりを解説
し出すとキリが無くなりそうですし、ゲームの本筋から外れてしまうから敢えて簡単な説
明に留めおいたのかもしれませんが。

 結局は、内戦状態に陥った原因が、経済理論の実現とか、縄文人と弥生人のルーツ
とか簡単に語られるのみですが、こういった概念の何処に未成年の学兵を戦争に駆り
立てるエネルギーがあるのか最後まで疑問でした。
 ライター氏においては、かなり詳細な裏設定をお持ちで描かれている様子ですが、そ
の設定が複雑であればあるほど、逆に主人公達は単なる若さゆえの不満を戦闘行為
に置き換えたテロリストにしか見えなくなります。

 「戦争は経済活動の延長である。」という至言がありますが、経済・政治活動の行き詰
まりの最終形態が戦争である、というメタメッセージを語りたいのかな、とも思えます。
 しかし、米軍等の動向を気にして中立に走っているらしい海上自衛隊とか、蝦夷共和
国からの義勇軍とか、世界経済の動向とか米国の大統領選挙とか、背景にリアリティ
を持たせようとしてあたら複雑化を計り過ぎたきらいがあると思います。

 メーカー公称「本格未来架空航空戦記ADV」となっていますが、実際は戦争のというか
航空戦や地上戦がメインのゲームではなく、過渡期に翻弄される若者達の人間像という
側面の方が強いです。
 設定と部隊背景にはあまりリアリティというか理解を覚えないのですが、戦争という存
在そのものはかなり生臭くリリカルに描かれていると思います。
 最後まで本格的激突が無かったり、政治的な立場を強めるだけのための兵士に無駄
死にを強要するだけの最終激戦とか。
 航空戦のシーンも少なく、航空戦とパイロット達の物語と想像していると相当肩透かし
かもしれないです。

 しかし、常に死と隣り合わせという主人公やヒロイン達の置かれた極限状況による物
語としては、極端にSFやブチ飛んだ設定ではなく、現代日本とほぼ変わらない時代設定
である分だけ緊迫感はあります。
 シナリオの語り手=視点も主人公だけではなく結構変化しますが、その都度メッセージ
ウィンドウに現在の一人称キャラのバストアップが表示され、視点切り替えも違和感無く
進行します。

 更に、最初から主人公の陣営が劣勢で、負け戦前提というところが、琴線に触れます。
太平洋戦争に敗北した歴史を持つ我々特有のメンタリティでしょうか?負け戦に浪漫を
感じてしまうのは…。

 また、ヒロイン毎にしっかりとシナリオが分岐し、共通ルートは押さえつつも違った展開
が楽しめるのも良い。しかし、ヒロインシナリオ毎にかなりの格差があり、総括シナリオ的
な「GRAND ROUTE」も含め、「若菜」「加奈子」以外のシナリオはちょっと掘り下げが弱
いと思いました。

 舞台背景と成立過程は兎も角、シナリオとしては骨太で読み応えがありました。
 ただ、気になったのは後半になると主人公の「パイロットの視界を通して見た内戦」と
いうよりもストーリーの筋を押さえるのに一杯いっぱいになってしまう傾向が強い事。
 視点変更は非常に上手く使われているのですが、その分、焦点が少々分散してしまっ
ている感じが強いです。「本格航空戦」という感は弱いですね。
 その分、ミリタリー関連に知識無しでもそれなりに楽しめるかもしれません。微妙だ。 
総評  主人公は無敵のエースパイロットではなく、撃墜され、怖くなってヘタレたりする普通
の少年です。
 航空モノというとエースパイロットの無敵っぷりを想像しがち(筆者のみか?)ですが、
等身大の若者を戦闘機に載せるという設定には好感が持てます。
 ヒロイン達もそれなり以上に生き死にと隣り合わせになっていて、特殊な緊張感があり
ますね。そのためでしょうか?作中人物は非常に良くキレます。戦争状態という異常事
態下にいるためだと思いましたので、特にキャラがヒートアップする点に付いては問題に
は思いませんでしたが、主人公よ、ファイターパイロットが冷静な判断できなくてどうする
よ…。

 全くの偏見ですが、内戦@日本という事で、以下のような陳腐な予想をしてました。
 軍事関連に興味の無い方は次の空白行まで読み飛ばしてください。

 マンハッタン計画遅延 → コロネット&オリンピック作戦実施 → 泥沼の本土決戦
 → ソ連軍侵攻 → 米ソによる日本分断 → 冷戦後、東日本の社会主義崩壊
 → 日本統合 → 米国の傘で反映した西側日本との社会・経済問題発生
 → 東と西日本出身による差別・格差が顕在化 → 再び東西で内戦発生

 全くの的外れでしたが、内戦という状況を作るのに、一経済学者の経済論を持ち出さ
れるよりも解りやすいかなと思ったり思わなかったり。

 ヒロイン毎のシナリオですが、「夕紀」「圭子」はかなりオマケ扱いが強いです。
 隠れキャラ的「圭子」よりもシナリオが薄っぺらい「夕紀」シナリオはちょっと手抜きでは
ないかと思ったり。
 「美樹」シナリオは、シナリオ構成としては「救済シナリオ」っぽく感じました。意味はヒト
死にが一番少ないから。シナリオ単体としては本格戦闘が殆どない、一番ある意味リア
ルな感じはしますが、物語としてはちょっと消化不良。数々の同僚の死を見てきた「美
樹」というキャラを上手く描き切る前に終わってしまった感じですね。
 「若菜」シナリオはH回数とか流石にメイン扱いという感じで、「社会的義務」と「個人の
幸福」で揺れる主人公とヒロインの心情を結構上手く書いていると思います。が、ここで
も内戦に至った背景が弱いので、テロリスト同士の明日をも知れない状況下での吊り橋
効果満載の擬似恋愛としか思えない青臭さしか感じれない気もします。

 キャラクター的には最も不安定でシナリオ毎に役割と性格が変化している「加奈子」で
すが、キャラそのものよりも彼女の場合のシナリオが一番良かったです。
 個人的に「殲滅シナリオ」と命名しています。これぞ負け戦の極限、というエロゲーでこ
んな展開ありか?と思えるくらいバタバタ登場人物が死んでいくのですが、物語としては
緊張感があり一番面白かったですね。冗長な「若菜」シナリオは上にも描いたようにどう
にも背景の理解が出来かねているため、青臭さがハナにつきましたが、「加奈子」ルート
は負け戦として秀逸に書かれています。このシナリオで私的ですが評価が2点上がりま
した。
 しかし、「加奈子」シナリオの「俊治」=「トシ」は気の毒です。涙が出ます。
 他のシナリオでも貧乏籤ばかり引かされてロクな役回り貰っていない気がします。
 「群青」で最も不幸なキャラは美少年・天才少年パイロットの「トシ」でしょう。
 というか、「加奈子」シナリオの主人公は「トシ」の方が違和感無い感じです。どうせなら
主人公(ヘギー)と「トシ」の主人公ザッピングにすれば、このシナリオはもっと良かった
かなと勝手に考えています。

 後はEDの後にエピローグは欲しかったですね。「若菜」シナリオだけ、エピローグ的な
エピソードがエンディングにありますが、後のキャラはあっさりと終わり過ぎ。「GRAND
ROUTE」も意図しての事でしょうが、あっさりと終了しすぎていますね。

 個人的には「JAS39グリペン」をメインに持ってきた意味合いが薄くてかなり残念です。
 同梱の設定資料集に「何故グリペンか」という解説のようなものがありますが、作中で
はあまり活かされていないですね。
 空対空ミサイルが何らかの妨害で殆ど使用できなくなった条件下でのドッグファイトと
かピストン的な対地支援任務(敵弾が滑走路に落ちてくるような状況での)といったシー
ンがあればなあ。
 どうせなら朝鮮戦争くらいまで時代を退行させ、「Mig15」VS「F-80/84/86」のドッグファ
イト中心の制空権争奪戦とか見たかったですね。かなり偏見入ってますが。

 正直18禁ゲームとして世に出すよりも、エロ抜いて良いので、もっと背景を掘り下げ、
主人公を中心とした若者達の物語に焦点を当てて一般ノベルゲームとして出した方が
面白かったんではないかとすら思えます。
 まあ、一般ゲームでは売れないでしょうけどね。
オススメ度  架空戦記というジャンル自体は手垢に塗れていますが、その要素をADVに盛り込んだ
ライター氏に拍手を送りたいです。
 軍事関連に少しは興味があって、シナリオ重視のゲームを楽しみたい方にはかなり
オススメでしょう。
 逆に、ドップリとミリタリーな知識に埋もれているヒトには、戦闘関連がメインのゲームで
はないので失望があるかもしれません。
 いずれにせよ、物語を重視するユーザー諸氏にはプレイして損は無いと思いますよ。
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