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Forest

プレイ時間 CDレス
プレイ
CG枚数 H回想 ボイス 評価
約17時間★ 42枚※ 12枠▲ メイン女性フル 7.5点

★初回プレイ、途中可能な限りBADEND回収して13時間強。
2回目、コンティニューより始めて、2時間。
シーン回収、各選択肢コンプリートに2時間程度。

※差分含まず。

▲1枠はエンディング閲覧。(非H回想)

★事前に期待していたもの
「腐り姫」以来のシリアス路線になりそうなので。
基本的にメーカー買いな所。
ファンタジー系っぽいので、そのあたり期待大。事前情報は殆ど仕入れませんでした。

システム  ライアーソフトといえば、バグの標準装備。(おいおい・・・)
 「行殺新撰組」や「腐り姫」の修正FD同梱。「CANNONBALL」へのCD-R同梱と
お詫び葉書投函用の切手同封。
 まー、プレイに致命的な影響を与えるバグが最早初回特典と化しているきらいが
あるメーカーです。が、
 
 今回は目立ったバグがありません!!!

 一部、音声が入っていないんではないかな?、と思わせる箇所がありましたが、そ
のくらいです。
 動作も安定。重くも無い。
 ここだけのお話、これだけで満足してしまっていたりして。(チガウダロ)

 さて、真面目なお話ですが、実際システムに不満は殆どありません。

 操作はメッセージウィンドウ右下端のアイコンを使って操作。
 及び右クリックでの環境設定メインの画面呼び出しの二系統。

 ホイールマウス、メッセージ読み返し対応。読み進め非対応。
 右クリックはメニュー呼び出しのみ。
 Ctrlキーにてメッセージスキップ可能。Shiftキーでメッセージウィンドウ消去。

 画面右下端のアイコンでは以下が行えます。
 メッセージウィンドウ透過度調整。(透明−黒)
 1つ前の選択肢に戻ってやり直し。(戻った選択肢からは戻れません。)
 メッセージ巻き戻し・巻き戻したメッセージの読み進め。
 メッセージスキップ。
 既読メッセージの音声再生。(テキストで書かれているセリフのみ。)
 メッセージウィンドウ消去。

 右クリックにては
 フルスクリーン・ウィンドウモード 切替。
 音声・BGM・効果音の調整。(一括On/Offとアナログバーによる音量調節。)
 画面効果のOn/Off。
 テキスト速度調節。(3段階)
 メッセージスキップの既読のみ・未読含め強制 の選択。

 オートモードが装備されていないのが不満といえば不満ですね。
 それからアイコンが小さいので使い勝手がいまいち。
 これ以外は概ね満足でした。
音楽・CV  音楽は、作品世界に合わせて、英国風のトラッドなアレンジが多く聞けます。
 個人的にはヨーロピアン・トラッドやケルトロックは大好きなので非常に嬉しいで
す。Woodwind系の楽器とフィドルが特徴だと思います。
 OPで流れる「フォレスト」はチャーチ/ミステリアスなイントロからがらりとケルト
風に転調するフェスティバルソングで、レトロ調に処理されたOPアニメーションと
実に雰囲気がマッチしています。
 また、ハープやアコースティックギターを上手にアレンジして、何処と無く哀愁の
漂う欧州大陸的な感触のある曲が揃っており、趣味は最高だと思います。

 何と言っても、和風ポップスなボーカル曲が無い。
 これ最高。ゲーム=女性ボーカルのOPとEDは食傷気味。
 特に歌う顔ぶれが毎回ほぼ同じでは、いい加減飽きますし。

 BGMとしては、実にレベルが高いですね。オマケモードで14曲聞けますけど、これ
は初回特典でサウンドトラック入れて欲しかった。これなら普通にBGMとしても楽し
めるでしょうから。
 映画音楽として通用する統一感のあるBGMが並んでいると思います。
 とはいえ、アイリッシュやケルトに興味が無いと、それ程凄いとは感じないかもしれ
ませんが・・・・。

 音声に関しても、登場人物(?)が多いだけに、メインのキャラクターだけがフルボイ
スで良かったと思います。
 どの方も全く問題ない演技をしてくれますし、場面に合わせた演技も完璧。
 当然エロシーンでも良好な演技が出来る方ばかり揃ってますので、音声に関して
の不満は全くありません。

 加えて、テキストと音声で喋るキャラクターが異なる。要するに、キャラクターがリア
ルコミュニケーションで会話している様子を無音ダイアログであるテキストと、有音声
のCVを同時や時間差を加えて織り交ぜる事で表現しているという、かなり珍しい
演出が光ります。
 うかつにテキストを読み流しでクリックしてしまうと、バックに流れる音声セリフを逃
してしまう危険性もありますけど。が、後半になるとこの演出がガクリと減ってしまう
のがアンバランスだったなあ。
CG・立ち絵  まずは絵柄ですが、かなり独特ですね。線は太いのに、絵としてはクッキリとせず
に、陰影がハッキリと出る独特の描き方です。
 ゲームとしての絵よりも「絵本」としてのイラストレーションに向きそうなタッチを意
識して描かれていると感じました。
 特に、エンディングのキャラクターと、本編に登場する立ち絵や一枚絵も含めた絵
の描き方が全然違うのは、作品世界に絵柄を合わせる事が出来ている証拠だと
思います。ここは原画家さんの技量に降参というところ。
 また、塗り方もグラデーションを過剰に使っているのですが、それが実に太目の線
と絵に似合っているのが凄いです。
 とはいえ、絵柄自体はかなり好みが分かれそうです。私は好きですけど。

 立ち絵は、全身図とバストショットを使い分ける形になってます。
 特徴としてメインキャラクターのみ天然色。(笑)
 脇役が全て単一色系の影絵風な色塗りをされている事でしょう。この演出は非常
に面白いです。脇役の色の塗り方も滲ませたり、線をグチャグチャっとさせて存在
自体をはっきりと描かなかったりと、ゲーム世界上での立場を色塗りでも表現してい
る点はユニーク。
 また、主要人物の立ち絵、服装がコロコロと変わります。髪型や髪の長さまでかな
り頻繁に変化するのですが、これはその時のキャラクターの役所に応じて変化して
いる為、一瞬前の立ち絵とバストショットの服装が異なっていても、ある程度ゲーム
が消化出来てくると気にならなくなります。

 バストショットの表情は結構大きく変化してくれます。あまり出番が無いのですが、
それだけに印象的。そもそもバストショットの服装は固定なのですが、これが手抜
きではない(実際はどうだとしても、そう見えないですから、製作側の勝ち。)、また
はないと思わせてくれます。
 立ち絵の服装もかなりバリエーションがあります。
 が、マニュアルに書かれている絵とか、パッケージ裏の「黛 薫」の立ち絵ってゲ
ーム中に出てこなかった気がしますが・・・・。更にパッケージ裏のCGは兎も角、ス
クリーンショットも本編中には一度も出てこなかった気がするんですが・・・・。
 流石ライアーソフト。(違)

 一枚絵CGですが、たった42枚。しかも99%がHCGでシーン回想とほぼ被ります。
 コロコロと服装の変化する立ち絵と、カット・インを多用した演出。数多い影絵的な
脇役の立ち絵の為に、取り立てて少な過ぎるとは感じませんでしたが、やっぱり
これでは少ないです。
 HCGだけではなく、日常シーンのCGがもっと欲しかった所ですな。
 絵としては安定しているし、バックが殆ど暗闇であるのもキャラクターの姿を浮き彫
りにする演出として上手く活用されていると思います。
エロ  微妙ですね。
 決して薄くはありませんが、濃厚では決してありません。
 そもそもこのタッチではエロ絵にはあまり向かないから、絵的にはあまり期待は
出来ないかと。
 但し、快感に喘ぐ女性キャラの顔は何とも色っぽいです。
 演技に関しても、先に触れたように問題なし、というよりも声で牽引している部分
がかなり大きいです。
 設定として、現実にHしているのか、幻想の中なのか明確にされていないシーンも
あり、シチュエーション的な盛り上がりは期待出来ません。
 なし崩しというか刹那的に身体を合わせるという状況が多いので。
 特殊なHも無し。
 理性で合意しても感情で反発される為、手錠を掛けた拘束Hがありますが、別に
痛くも何とも無いです。至ってオーソドックスなHばかりです。
 作品の特殊性とはまるで正反対ですな。

 そして、これはエロシーンのみの演出ではありませんが、地の文のテキストが表
示されている場合でも、喘ぐ声が流れるという「CANNONBALL」でもあった演出が
巧みに取り入れられているのもマル。

 回数は11回(うち1回はリッキングプレイのみ)とそれなりでしょうか。尺も短目な
ので、あまり過度な期待はしない方が無難です。
シナリオ  実在の副都心「新宿」に縁あって縛り付けられている5人の登場人物。
 唐突に、出現した異界である「森」に招かれ、「森」が一方的に投じてくる「リドル」
から抜け出す為、現実から遊離した世界で苦闘する。

 ちょっと説明し難い設定です。
 アスファルトとコンクリートの裏側に出現する異次元空間(厳密には全く違います
けど)の「森」が、必然も無く5人のメインキャラクターを召還−というよりも、彼らの
周囲に自分のファンタジーを降ろして、彼らをロックアウトしようとする。
 これが「リドル」−日本語訳するなら「謎かけ」ですが、その「謎かけ」を解き明かし
て現実世界に戻る冒険が一応のメインストーリーになるのかな。
 「リドル」に対抗する為に、彼らには「ギフト」という能力が授けられるので、その力
を使ってファンタジー世界からの脱出を試みる。

 突如現実に紛れ込んでくる「童話」や「物語」のシチュエーションに対して、
一癖も二癖もある5人の登場人物が織り成す物語という感じです。
 シナリオを考察していくと完全にネタバレになるし、解釈に関しては十人十色の捉
え方がありそうな展開です。
 よってこれ以上は根幹に踏み込む事はしません・・・・なるべく。

 まず、非常に難解というか、実に英国的な物語ですね。
 ちょっと視点を変えれば、英国物語に対する強烈なアイロニカルがありそう。
 小難しい理屈や薀蓄、設定を次々に羅列し、
 「解らない無教養人は、解らないままに沈んでいろ。」
 と突き放す、頭でっかちな英国文学仕立てに作りあげる事によって、オリジナルに
対する風刺と受け取れる面が、私には感じられました。

 表面的に、ひとことで表現するなら、

 古今の童話や物語のアナーキーでアングラなパロディ。

 という感じかな。

 通常はダウンタウンのインディ劇場で上演されるような現代アレンジの童話やア
ダルトに改修された童話をゲーム世界で表現した感じもします。
 故意に舞台俳優のような棒読みセリフでミュージカル風の物語進行をさせたり、
記録者視点の物語風に、常に誰かの眼を通して物語を展開させたりと、前衛芸術や
小説風の構成を模している面が見られます。
 まさにアングラの演劇や戯曲という感じがしますね。難解さを剽窃する行為を敢え
て楽しむという姿勢が。

 実際、実に難解というか、ロクな情報がプレイヤーには与えられません。
 ゲームが進むにつれ、次第に事件の根源は明かされてきますが、そこまでがかな
り厳しいかもしれません。

 一言で言えば、シュールでナンセンスです。話の流れは唐突を通り越して、異次
元空間に繋がったような展開すら見せます。
 落語で言う、『間抜け落ち』や『回り落ち』にすらならない。
 まるで、幼稚園児が作ったお話のように、ご都合主義の展開になるかと思えば、
脈絡すら無い展開が連続したり。今風で言えば、電波ストーリーとして分類されて
も仕方ないかもしれませんね。
 無論、これこそが物語りの核ではあるのですけど。

 形として、7つの「リドル」があり、それを挟んで物語を補填するショートストーリー
が挿入される形になります。
 ある意味ですが、現実とファンタジー、時間列すら混然とした物語が並べられてい
ます。しかし、ストーリーは一本道。キャラクター別のエンディングもありません。

 始まるべくして始まり、予定調和に収束した物語。
 私はこんな風に思ってます。
 後半で予想した通りのエンディングになりました。(苦笑)
総評  人を極端に選ぶゲーム。これに尽きます。

 まず、リドルの骨になっている幾つかの物語や童話。
 これに対する知識が無いと、面白さが半減する危険性が有ります。
 ある程度の元ネタを知っていないと解らないセリフや展開がありますから。

 しかし、元ネタに対して、なまじ知識や愛着が豊富だと、この前衛的というか電波
的なストーリーに、お気に入りのキャラクターや人物が使われる事が駄目になる、
反発を覚えてしまうという可能性も存在しているでしょう。
 このあたり諸刃の剣だったりするかも。

 最低でも
 『不思議の国のアリス』 − 『Alice's Adventures in Wonderland』
 『ナルニア国物語』シリーズ − 『Chronicles of Narnia』
 『クマのプーさん』 − 『Winnie‐the‐Pooh』

 この辺りは(誰でも読んでるとは思いますが)必要かも。
 まあ、これ以外に『ウォーターシップダウンのウサギたち』(原題:Watership
 Down)や『ジュマンジ』(Jumanji)、ミュージカルの『CATS』といった現代のお
話からも引用されています。
 『ガリヴァー旅行記』の「ラピュータ/飛ぶ島のお話」(日本ではアニメでラピュタ
の方が通りが良いですな。)とか、『ピーターパン』、といった具合にもうごった煮で
ブイヤベース状態です。

 こうやって物語のキャラを持ち込むことで、何でもあり、何がおきても不思議では
無いという世界をまず構築してしまっているので、訳の分からないお話が続いても
受け入れられる余地がプレイする側にも生まれるのでしょう。
   1つ、その場面で登場しない筈のキャラクターとHシーンが発生する不整合があり
ましたが、それすらギミックかと深読みしてしまったり・・・・。

 個人的には原書で読んだ『Watership Down』がアリスのお茶会で始まった物語
に出てきたのが意外でした。あれ、スコットランドの植物の名前が全然解らなくて
苦労しました。とはいえ、オリジナルに思い入れがあってもゲームでの使われ方が
ハナにつく事は自分はありませんでした。

 まあ、そんな事はどうでも良いのです。こういった純粋な童話のキャラクターと
現実の垢に塗れた主人公達との会話が噛み合わないし、噛み合わないまま、個人
個人がそれぞれ勝手に動いてしまっている混沌。
 登場する5人のメインキャラクターも、かなりアクが強く、それぞれのコミュニケーシ
ョンすら満足に行えない。これが更にカオスに拍車を駆ける。

 このケイオティックで滅茶苦茶なところが、「Forest」の面白さであり、入り口の狭さ
であるように思えます。
 受け付けない人には、全く駄目な主人公達であり、世界設定であり、物語の流れ
でしょうから。

 一応、主人公は「城之崎 灰流」となっていますが、実際、物語の大半は傍観者
です。どのキャラクターも個性が強いですが、キャラクターの内面描写は最低限に
抑えられ、まるでもって与えられた役割を果たすだけの駒的に書かれている気が
します。
 言い換えると、誰もが主人公であり、主人公でないような物語。
 まあ、当然クライマックスで変化はしていくのですが。
 特別、キャラクターを中心にした話ではないので、この手法は良いと思います。
 ラストの余韻に浸るよりも、そこに至るまでの展開を楽しむスノビッシュさがあるス
トーリーではないかと。
 とはいえ、ラストはそれなり以上に印象的でしたけどね。

 とても示唆的だったのが、絵の項で敢えて触れなかった背景です。
 背景は殆どが現実の「新宿」のショットを撮影し取り込んだモノ。普通は同人ゲー
ムに使われる低予算方式(笑)なんでしょうけど。
 しかし、ここの写真の所々を修正し、「森」の梢が張り出し、緑の葉を茂らせてい
る絵を組み入れています。

 幻想に侵食される現実。或いは、幻想に漂うだけの存在が危うい現実。
 非日常的な物質は目に入らない都会生活者の眼。
 リアルと幻想の境界線のあやふやさ。

 こんなメッセージを写真を僅かに修正する事で示しているように解釈しました。
 巧みですね。イラストで新宿の場面を描き、背景にして、そこに葉や森を書いても
こういった異様さは出せなかったでしょう。

 また、パッケージのイラストも示唆的です。
 冬用の衣装を着た5人のキャラクターが、時計台をバックに輪になって踊る。
 回りに舞うは白い花弁。
 これはラストシーンへの強烈な暗喩として受け取れました。 
オススメ度  私はとても楽しめました。
 こういう難解なお話を丸投げはせずに、切れ切れで情報を与えてくれる物語が
好きなので。

 しかし、純粋に物語が面白いとなるとちょっと疑問です。
 エンターテイメントというよりも、乱雑に投げ散らかされたパズルから、必要なピー
スを拾い集める事に楽しみを見出すタイプのゲームだと思います。
 序盤は全く情報が不足しているが、序々に謎が解き明かされていくタイプのゲー
ムともかなり毛色が違います。(これは正統派ですね。言ってみれば。)

 ある程度の情報は与えられるが、決して整然としていないし、全てのイベントが
理詰めで解釈出来ない部分も多いので。
 難解というよりも、異色作ですね、自分には。
 7.5点という点数は妥当だと思いますが、整然としない物語は嫌、意味不明な展
開は駄目という人には0点のゲームです。(2/15下方修正。)
 一般受けする要素が高かった「腐り姫」とは全然方向性が違いますね。
 オール・オア・ナッシングのターゲッティングなゲームだ。

 しかし、こういった一般受けしそうもない企画が通るとは流石ライアー・ソフトさん。
 今後も期待大です。
 問題はこのソフトがどれだけ売れるかですね。合わないと開始5分で投げ出す人
がかなり出そうな予感がします。
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