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沙耶の唄

プレイ時間 CDレス
プレイ
CG枚数 H回想 ボイス 評価 オススメ
点数
4時間30分★ 83枚 無し フル
(主人公含)
8点 6点

★初回プレイ1時間40分。
2回目、選択肢からリプレイで2時間10分程度。
3回目、選択肢からリプレイで40分程度。

★事前に期待していたもの
メーカー買い。これまでに大ハズレは無し。
独特のハードボイルド路線に期待。

システム  ニトロプラス独自の右クリックオンリーでメニュー呼び出しの足回り。
 全く不満はありません。
 欲を言えば、バックログ参照の際、右クリックでゲームに戻れれば完璧でしたが。

 右クリックで殆どの操作が可能。環境設定で細かいコンフィグが調整できます。

 フルスクリーン・ウィンドウモード切替 有り。
 メッセージスキップの既読・未読判定 有り。スキップ時に立ち絵やCGをカットする機
能も有り。
 オートモード 装備。(アナログバーでクリック間隔調節可。
 セーブ・ロード 呼び出し。(60スロット)
 バックログ読み返し。ホイールマウス対応。
 メッセージ速度変更可能。 (アナログバー調節)
 メッセージ消去。
 前の選択肢まで戻る。
 終了。タイトルに戻る操作。
 音声・BGM・効果音調節可能。(アナログバー)キャラ別On/Off可能。

 環境設定項目では、かなり細かい設定が可能ですが、過剰に思えるほど親切です。
 今回のウリは、グロテスクなCGをぼかしたり、画面の輝度を押さえて見え難くする
機能が選べる事でしょう。
 起動時にフルスクリーン固定、音声無しのテキストは自動送りにする、といった細か
い項目が変更できますが、詳細を書くまでもないですな。兎に角、非常に使い易い。

 ホイールマウスでメッセージ送りが可能なのは非常に嬉しい。クリックよりも楽ですし。
音楽・CV  音楽は、サウンドモードで聞ける曲が15曲。
 何故かここに収録されていないボーカル曲が1トラック有ります。
 BGMはシンセサイザーを多用した暗い曲や、ヘヴィなギターを前面に押し立てた重い
曲が目立ちます。
 単体で聞くと、その暗さから面白からぬ曲が多いんですが、ゲーム世界とは非常に
マッチしていると思います。
 女性コーラスを使用したハミング曲が印象的。
 ボーカル曲については、エンディング後のスタッフロールで流れる「ガラスの靴」で、
ちゃんとバンドサウンドを使っているのが良い。
 キーボードサンプリングとドラムマシンでお茶を濁すアレンジは好きではないので。
 ボーカルの方は、歌は上手だと思います。私は邦楽ボーカルには全く興味がないの
で、これ以上語れませんけど。

 音声は主人公もフルボイス。
 基本的に主人公のボイスは大嫌いで普通カットするんですが、この作品に限っては
ちゃんと最後まで聞けました。
 何気に男性声優のメインお二方は、一般で非常に著名な方ですね。
 特に主人公ボイスの方、最近頻繁にエロゲーに参加されてますが、この方のイメージ
はコンシューマーRPGである程度作られているので、個人的には哀しい面も。
 そういった個人的な感情は置いといて、 男性・女性共に、演技に関しては完璧です。
全く問題なし。

 また、テキストだけのシーンでも、その場面に合わせた声が流れるという演出は目立ち
ませんが、良いと思います。
CG・立ち絵  まず、背景に関してですが、グロテスクCGカット機能が適用できます。つまり、製作側
の見地ではグロテスクという事になるんでしょうけど、それ程酷くは無いと思います。
 グロテスクでない背景は、取り込み写真をイメージ化したように覚束ないタッチです。
 このリアリティ追求型の背景は、グロテスク化した絵とのコントラストを強化するには
役立っていると思います。

 立ち絵は殆どありません。「沙耶」が最もパターンが多いです。他のキャラはパターンが
無いに等しい。
 というよりも殆どのシーンでは立ち絵=CG的な使われ方をされているように思えます。
 立ち絵自体の線もラフ画の雰囲気を故意に残したような感じです。立ち絵の輪郭も細
い線を重ねたような処理をされてますし。
 1枚絵、立ち絵CG共に、ややくすんだ色使いの塗りをされており、イラスト的な感覚が
強い。
 最も力が入っているのが女性の顔よりも、テンパッた表情を含めた男性キャラの表情
のように思えてなりません。(苦笑)
 好き嫌いが分かれそうな絵柄ですが、私は好きですね。
 こういった「薄い」イメージがある絵は。
エロ  基本はロリキャラである「沙耶」のHシーンですね。オヤジキャラに強姦されるシーンを
含めて3シーンあります。
 尺は短いし、濃厚ではないです。
 他には3Pと陵辱されるシーンがそれぞれ1つずつ。
 パイズリが1シーンあります。

 ゲームの長さからするとHシーンの数はそれなりかと。
 しかし、全く濃くないですし、「沙耶」の『正体』を知ってしまった後は実用に供するには
かなりの精神力と妄想力を必要とするように思えます。
 ぶっちゃけ、実用度は無しに等しいですな。
シナリオ  交通事故による瀕死の重態から生還を果たした主人公「匂坂 侑紀」は、全ての感覚
が狂ってしまい、日常全てが悪夢のような世界にしか捉えられなくなってしまった。
 その主人公が唯一、以前と同じように人間として見て、触れて、感じる事が出来る存在
の少女「沙耶」。彼女に縋る様に生活を送る主人公の日々は、狂気に染まっていく。

  ある日、これまで正常に感じられていた五感全てが反転してしまったら?
 普通に見て、聞いて、感じて、味わって、嗅いでいた日常全てが生理的嫌悪を覚える
モノになってしまった後、逆に生理的に受け付けられる存在とは、本来の姿はどうなの
だろうか?

 これが基本となるテーマのひとつでしょう。
 五感が脳の損傷によって壊れてしまった事によって、起きながら悪夢を体感する羽目
になった主人公が冷静に日常から逸脱していく様が描かれています。
 が、これが内面世界の描写で終わらないのが、このライターさんの特徴ですね。
 サスペンスホラー、残虐映画のような展開に次第に移行していきます。

 主人公の主観では、普通の人間が化け物に、目に映る風景は全て内臓が腐ってドロ
ドロになったオブジェのように見えるのですが、その中で少女「沙耶」だけは普通の人間
として彼の目に映る。
 しかし、主人公だけにマトモに見える存在であるということは、本来の姿は・・・・
 まあ、少なくとも正常な五感を有していれば人間とは思えない外見の・・・
 となる訳です。

 主人公の主観視点と、第三者的なテキストが交互に現れる形式ですが、流れがスム
ーズですので、全く不自然さはありません。

 18禁要素をエロではなく、グロテスクな方面に使おうとしている実験的な試みがあちこ
ちに見えています。
 個人的にはそれ程胸が悪くなる事もなく、残虐シーンのあるホラー映画くらいに楽しめ
ましたが、駄目な人は駄目でしょう。
 人間とは全く別物の怪物を登場させながら、アクション系ではなく、ジワジワと迫る恐怖
を描いた、精神面的なホラーの素養が強い物語です。

 結果として、かなりダークな物語になり、救いは一切ありません。
 事件に拘わったキャラクターは、誰一人ハッピーエンドを迎えません。少なくともマトモ
な人類の感性からすれば、という注意書きをつける必要が有りますけれど、その幸せの
基準には。
 鬱展開云々以前の問題ですな。

 問題は、やはりシナリオボリュームですね。定価4800円という低価格ゲームですので、
仕方ないともいえますが、選択肢はたったの2箇所。
 プレイ時間はテキストを読む速さで人により変化するでしょうが、5時間を越えることは
ないように思えます。私の場合かなりゆっくり読んで、声を全部聞いて4時間30分くらい。
 選択肢によって変化するエンディングは3つしかありません。
 プレイ時間の長さでは、「鬼哭街」よりも短い。
 この為、キャラクターの掘り下げがやはり出来ていません。
 恐怖と狂気を表現したいなら、主人公と「沙耶」の内面描写がもっと必要だと感じまし
た。が、この世界が延々と語られるのも結構キツイ気もしますから、ボリュームはこの程
度でも良かったのかな。微妙なところです。

 物語を追うのに一杯一杯になってしまい、各キャラを十分に動かせていない所はまさに
ホラームービーですね。
 もっとも「見せる」部分を強調する意図なら納得はできます。
 選択肢の少なさからゲーム性をとことん排除して、シネマティックなデジタルノベルに仕
上げた感じですかな。
総評  卑近な例えですが、映画「エイリアン2」の方向ではなく、「エイリアン3」の雰囲気をメイ
ンにしたホラー映画と考えれば適切かと思われます。
  アクションや銃撃戦は、殆どドラマに突けたしの要素でしかありません。これまでガン・
アクションや兵器に拘りを見せていたライター氏ですが、より「怖さ」を演出しようとしてい
るようです。

 だた、その「怖さ」が十分に書き切れているかと、少し疑問が有ります。

 終始、内臓をぶちまけたような背景が表示される為、残虐シーンに対して耐性が出来て
しまうのかもしれませんが、背筋が寒くなるような恐怖は感じませんでした。
 これは、非人間キャラである「沙耶」に攻撃性が薄いのもある為かもしれません。
 が、ここもユニークなポイントで、本来サスペンスホラーやスプラッタ映画の定番は、未知
の敵に襲われる恐怖を描くものですが、このゲームの場合、人間のアイデンティティの敵
となるべき対象が、人間味のある存在として書かれている事です。
 これによって、単純な人間 V.S.怪物の図式では収まらない、より本質的な人間の感
性に疑問を投じている気がします。
 狂気と紙一重にある、人類の美的感覚や道徳観の脆さと危うさを、ホラー要素を使って
訴えようとしていると私は考えています。
 しかし、これを表現するにはやはり全体の書き込みが足りない=ボリューム不足な所は
否めません。

 少し色々と詰め込んだ割には、物語を走らせることで終わってしまった感じが強い。
 単純に、残虐シーンをリフトアップさせれば恐怖が増すわけではないですから、ユーザー
の敷居を低くする為にもこの程度のグロテスクさで適量だと思います。が、もう少し、焦点
を絞った物語にして貰いたかったとは思ってます。

 より「恐怖」を前面に出すか、或いは主人公の壊れていく「狂気」をクローズアップすると
かで。

 それらの批判とは別にして、やはりテキストは上手ですね。文体は硬めですが、それを
硬質に感じさせないテンポは流石です。敢えて難しい表現を使わないのに、重厚な雰囲
気があるのは賞賛したい。

 また、3つのエンディングに共通する無常観というか、静かな狂気を含んだ空気は非常に
素晴らしい。
 ありきたりの萌えゲーで、鬱系エンドを土壇場の展開から吐き出されると、かなり嫌気を
覚えますが、こういったゲームの世界観にピッタリしたエンディングを持ってこられると、そ
れが救いの無い暗いエンドであっても、とても説得力があります。
 但し、そのエンドに至る展開が性急だった為、やや唐突な感じは少し付きまといますが。
オススメ度  大岡昇平氏の「野火」を読まれて、これは駄目だと思われた方や、実話を基にして作
成された映画「Alive」(日本タイトルは「生きてこそ」だったかな)が、生理的に受け付けな
い方には絶対にオススメ出来ません。手を出すのは止めましょう。
 グロテスクシーンや残虐な描写は、そこまでドギツクは無いと思いますが、ホラー映画
が全く駄目なら食欲を無くしてしまう可能性があるので、これまたスルーしたほうが賢明。

 一応対費用効果を考えると、ゲームの出来からは6点くらいがオススメですが、
グロや残虐が駄目なら、これにマイナス3〜4点。反対に耐性があればプラス1〜2点。

 個人的には、18禁要素をエロではなく、他の健全お子様向けコンシューマー作では不
可能な描写に活用するのもXゲームの在り方だと思っていますので、この方向性は歓迎
です。
 ボリュームでは不満がありますが、実売4000円程度でこの時間楽しめたなら、8800円
のゲームで10時間退屈な思いをするよりもお得感がありました。
 個人的には、こういう話が好きなので、8点。
 是非、エロシーンではなく他の部分を活用した成人ゲームがもっと増えて貰いたいです。
 次も大いに期待します。
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