トップページへ戻る    感想一覧へ戻る   あかべぇそふとつぅ OHP

車輪の国、向日葵の少女

プレイ時間 DVDレス
プレイ
インストール
容量
CG枚数 回想 ボイス 評価
25時間弱★ 不可 1.35GB 99枚※ 7枠 フル 9点


★「全員ED(?)→「さち」→「夏咲」→「全員END?」→「璃々子」→「灯花」 の順で攻略。
初回プレイ約22時間。
2週目1時間30分、以下セーブポイントを利用して30分、15分、30分程度(BAD回収含む)
※差分含まず

★事前に期待していたもの
タイトルとパッケージに惹かれて衝動買い。(未開封中古品)
事前情報は全く仕入れて無かったが、パケ裏のコピーがかなり面白そうだったので。
前作のシナリオが駄目だったので、過度な期待はしてなかったのですが…。

システム  必要な機能は、ほぼ全て揃っていますが幾つか物足りない面も。
 何よりも、メディアレスでプレイ出来ないのは非常に面倒くさいです。メディアを
光学ドライブに入れる度にインストーラーが立ち上がるのはとても煩わしいです。
 プロテクト等は掛かっていない様子なのに起動にメディア必須とはこれ如何に?

 操作は右クリックによるメニュー呼び出し・メッセージウィンドウにマウスポインタを
近づけるとウィンドウ下に簡易メニューが出て、セーブ・ロード、オートモード、スキ
ップ等が可能です。
 後は画面上部ツールバーでもスクリーンサイズの切り替え、バックログ参照程度の
更に簡易操作が可能です。

 フルスクリーン/ウィンドウ 切り替え有り
 セーブ・ロード 150スロット オートセーブ10スロット
 メッセージ速度 アナログバー調節(既読・未読それぞれ個別に設定可能)
 キャラクターボイス・SE・BGM アナログバー調節(個別On/Off有り))
 オートモード アナログバー調節
 バックログ ホイールマウス対応

 テキスト読み進めにホイールマウス対応は良いですね。
 既読メッセージのスキップもかなり速いです。しかし、一旦スキップを開始すると、右
クリックでは止められず、左クリックでスキップを止めるのがデフォルト設定(変更が
不可)で、やや慣れるのに時間が掛かりました。
 フォントの選択や選択肢以降の既読スキップ継続があれば、より快適にプレイが可
能だったとは思えますが、特にストレスは感じなかったですね。メディアを逐一入れ
直す事以外では。
 後、Ctrlキーで強制スキップをした場合、キーを離してもスキップが解除出来なかっ
たんですが、ショートカット説明では個別設定可能と書いてあります。???

 特典としてハードカバータイプの原画さんのイラスト集やキャラクター紹介が掲載され
たブックレットが付属していますが、マニュアルはペラペラ。これも最近の傾向なんで
すかね?
 特典は入らないからメディアレスでのプレイを大いに望みたいところです。
音楽・CV  音楽は特にエンディングを迎えなくてもEXTRAモードにて試聴可能です。
 何と、ヴォーカル曲3曲を含め、62曲もリストされています。
 ヴォーカル曲は、作品世界にマッチした良い雰囲気の曲でしょう。個人的にはED曲
はいまいちな感じですが、基本的に邦楽ヴォーカルには食指が動かないので、あま
り参考には我ながらならないでしょうが。
 BGMは、特に素晴らしく突出した曲はないと思うのですが、これだけの曲数があり
つつも、他の曲と雰囲気が全く違って浮いたトラックが無いというのは賞賛に値しま
す。
 しかも全体のBGMのクオリティは非常に高いと思います。好感が持てるのは、個人
的に大嫌いなヒップホップやラップ的な超絶に安易なアレンジに色気を出さずにしっか
りとしたコンポーズとアレンジをしている点ですね。
 特典のブックレットよりも全曲入りのサウンドトラックが欲しかったところです。(しつ
こいですが)

 声に関しては、最初ちょっと違和感があるキャラクターもいましたが、直ぐに慣れま
した。当初、「三ツ廣さち」の声が少々合わないかなという印象がありましたが。
 総じて、非常に良い演技とキャスティングだと思います。
 ただ、「法月将臣」役の「若本則夫」氏なんですが、ハマリ役なのは間違いなし。が
やや演技がクドいと思える場面が結構ありました。というか役を創り過ぎている気が
します。もっと自然な感じで演技をすれば良かったのではと思いますが。
 後、サブキャラにも全てCVが付いていますが、メインキャストと比較するとかなりレ
ベルが違い、ギャップの差から違和感ありまくり。
 寧ろ、全キャラクターフルボイスに拘らず、メインキャラクターだけでも良かったかと。
CG・立ち絵  背景は丁寧に描かれていますね。キャラクターの塗りが濃い目なので、こういうク
ッキリした背景は良いマッチングだと思います。やや背景のパターンが少ないかな。
 立ち絵に関しては、結構表情のパーツは豊富です。もう少しパターンが欲しいとは
正直思います。結構長いゲームですから。表情に比べてポーズが少し少ないのは
残念です。
 流石にメイン扱いヒロインだけあって「日向夏咲」の立ち絵パターンは多い。他人の
眼を見つめないアングルと正面に向いた時の表情の印象がかなり違いますが、恣意
的に描き分けているのでしょうか、兎に角斜めに目線を遣っている時と正面の表情
の違いが印象的です。
 1枚絵CGはやや立ち絵と眼の感じが異なるので、ギャップは感じます。キャラクター
の輪郭を仄かに光らすような塗り方は特に夜の場面では良く映えますね。
 枚数はそこそこですし、これという場面には大抵CGが挿入されますので、少ないと
は感じませんでした。
 逆に二頭身系のコミカルなCGはあまり必要が無かった気もします。微笑ましいです
けど、その分普通のCGが見たかったかなと。
 個人的には1枚絵よりも立ち絵のCGの方が気に入ってます。
エロ  シーンを別個に見ればかなり頑張って濃くしようとする意図は見れますが、基本的
に18禁要素にはあまり期待しない方が宜しいかと。
 尺も普通、テキストもやや淡白です。
 主人公が恋愛には奥手という設定もあり、露骨にHな意味での18禁要素を出して
いる場面自体が少ないです。意味無しパンチラとかはありません。個人的には大い
に結構ですが。

 基本の流れは、フェラ→本番 または 本番→フェラ。中出し率は低いです。
 シーン回数は
 「日向夏咲」 1回
 「三ツ廣さち」2回(BADEND系で足コキからバックでのシーンあり)
 「大音灯花」 2回
 「樋口璃々子」 2回(1回は○学生な主人公への悪戯的手コキ)

 最もエロ的に優遇されているのは「大音灯花」でしょう。濡れ場での甘えっぷりと
事が終わった後のギャップも一番大きいですね。
シナリオ  独特の刑罰体系を用いた国のある現実の世界とは全く違ったSF的な世界で物語
は展開します。刑法が特殊であり、刑務所での服役義務は一切無く、罪を犯した
人間は、特定の義務を課せられ、その義務に拘束されるという設定。
 その被義務者の更生と監督を行うのが、主人公が目指している超国家エリートで
ある「特別高等人」。保護観察官に裁判官と政治家と警察権の一部を付与した感じ
でしょうかね。

 作中では日本を始めとした、リアルワールドの国家は大長編SF小説に描かれた
存在として登場します。
 但し、虚構世界とSF小説に描かれている私達の現実世界との垣根が非常に曖昧
です。作中普通に「日本人」という言葉を主人公が『SFの中の国のメンタリティ』とし
ても引用しますが、登場人物にも「日本人」というカテゴライズをしたりします。
 故意に混同させている感じはしますが、単純なミスかもw
 小説中に出てくる「中華料理」が現実でも調理されていたりします。
 しかし、明確に「日本」とは異なっている部分も多く、以前は絶対王政が敷かれてい
たとか、世界大戦で戦勝国になっており、世界政治のキャスティングボードを握って
いる様子です。
 まるでボスニア・ヘルツゴヴィナのような民族紛争を行っている地域は「南方諸国」
として登場しており、この辺りにはライター氏のアイロニーなメンタリティへの見方が
著されているように思えます。

 少々、雑文が長くなりましたが、特殊な刑罰法を布いている体制下で、絶対的な権
力を有する「特別高等人」になるべく、主人公「森田賢一」はとある田舎町へとやって
くる。故郷である町で「特別高等人」になる最終試験を受けに来るというのが最初の
設定です。
 その町でそれぞれ、以下の義務を負った3人の少女を更生させるべく奮闘する流れ
です。

 「恋愛禁止の義務」 「1日が12時間の義務」 「親権者に絶対服従の義務」

 と中々にユニークな世界構築と刑罰という制約をヒロイン達に課す点は、独特の発
想であり、非常に面白いです。
 ここに主人公の過去や、主人公を監督する冷厳な絶対権力者「法月将臣」が絡ん
できて、かなりシリアスなお話が展開します。
 当然、ヒロイン達はそれぞれ不幸ですが、単に不幸を見せ付けお涙頂戴とさせる
安直な所謂「泣きゲー」ではなく、やや教条的ながら社会制度と個人という側面を
踏まえたストーリーが根幹にあるので、読み応えのある物語です。

 また、一度はスムーズにハッピーなエンディングへ向かうと見せかけて、必ずドシ
ンと引っ繰り返す展開が連続し、中々手に汗握る山場を一度のみならず数回見せて
くれるので、長いお話ですが中弛みしません。
 但し、最初は良いのですが、あまりにも「ハッピーな流れになるぞと思いきやシリア
スで不幸な事件発生。更に乗り越えて終わると思いきや…」が定型化するので、最
後には耐性が付いてしまいました。もう少しイレギュラーなパターンを取り入れて欲し
かったのが本音です。
 が、そういう展開の巧みさもさることながら、伏線の張り方が非常に上手です。
 のっけから主人公は電波的な独り言を連発し、ミスター・パーフェクトともいうべき
能力にも容姿にも恵まれながら、突拍子もない発言をしたり、PCに向かってプレイし
ているプレイヤーに話し掛ける、ナンセンスギャクのような振る舞いもします。
 ネタバレになりますが、これ全て伏線でした。正直脱帽です。この要素だけで評価
が1点上がりましたし。
 但し、序盤でいきなり訳も分からずヒト死にがあり、主人公の行動と言動が完全に
イカレている、相当ナンセンスな流れのため、私は一旦プレイを中断しました。
 「これは地雷か」と思ってしまったのです。

 …序盤の超展開でウッ、と思っても2〜3時間はプレイしましょう。完全に物語に
引き込まれます。
 主人公の言動も最初は耐えられないかと思いましたが、やる時はやる男で、かな
り格好良いので、序盤は主人公が感性に合わなくても我慢ですね。

 シナリオで最大の問題は、極個人的に2つあると思います。それさえなければ満点
与えても良いくらい楽しめました。その辺りは総評にて語りましょう。
総評  この物語、全5章という仕立てになっています。
 2章からは全て英語で副題が付いています。悪癖ですが、それらについてちょっと
だけ語ってみたいです。興味無い場合は読み飛ばしてください。

 2章 「I can not afford to waste my time making money」
    (=金儲けのために時間を無駄に使う事は出来ない)
 スイス人の化石研究学者ジャン・ルイ・ロドルフ・アガシの名言。
 借金を返すのに安易なギャンプルに手を出して怠惰な生活に堕落した「さち」の物
語が第2章です。
 最も良く出来たお話がこの章だと思います。構成上、最も登場の早いヒロインです
が、この話しがトップというのはちょっと勿体無いというか、構成としては致し方ない
とはいえ、真打ちが序盤に登場するようなものですから…。
 怠惰な生活に慣れてしまう事と不法滞在的な外国人の少女「まな」を登場させる事
で、人種的な差別問題も示唆しています。

 3章 「The child is father of the man」
    (=三つ子の魂百までも)
 英語の格言ですね。人の性格は子供の頃に形成されるという意味合いです。
 全て親の言い付け通りに行動し無ければ鳴らない『大人になれない義務』を負った
「灯花」。若年層の自主性・主体性の欠如、家族・親子関係の在り方という問題に
ついて焦点を当てた章だと思います。

 4章 「What force is more potent than love」
    (=愛より強いものは果たしてあるのか?)
 ロシア人作曲家、イーゴリ・ストラヴィンスキーの言葉。
 冤罪により性格まで激変してしまった「日向夏咲」。疎外・いじめ等の社会問題へ
の投げかけは見られるのですが、この章が最も出来は良くないと思いました。
 肝心の「愛情」を挟んだ主人公とヒロインの葛藤が描かれ切っていない。というか
比較対象となる前の2章の出来が良過ぎる反動でもあるのですけど。
 クライマックスでの「夏咲」の言動と表情にはシビれましたけどね。
 主人公と過去を含めた接点・絆が最も深いヒロインだけあって、取り入れたい要素
は沢山あったのでしょうけど、やや性急かつ詰め込み過ぎです。
 展開としてはドラマティックですが、内容は一番浅い気がします。

 4〜5章 「I shut my eyes in order to see」
       (=見るためには目を瞑る)
 著名な画家、ゴーギャンの至言。要するに想像力を働かせるべし、という事なので
すが、この場合は…。ここは相当なネタバレになるので敢えて何も書きません。

 5章 「There is no such thing as society」
    (=社会なんて存在しない、あるのは個人だけ)
 フォークランド紛争の当事者としても有名な英国女傑首相サッチャーのお言葉。
 この言葉は個人が好き勝手な事をして良いという意味ではなく、何かあると社会
のせいにしたり、政府や社会に安易に助けを求めず、まず個人がしっかりとする事。
 以上が包括的な意味だそうで。
 「特別高等人」「個人に課せられる義務」という社会制度に不満を唱えるよりも、ま
ず個人が成長しなくてはならない、というのがメタメッセージになるのかな。

 さて、漸く本題に。
 まず、このゲーム、ヒロイン別のエンドがエピローグでありますが、基本は1本道に
なっています。2章「さち」、3章「灯花」、4章「夏咲」、5章「璃々子+クライマックス」
が基本になり、どれかのヒロインを選んでHして、選択肢を間違えなければヒロイン
別のエンドへ行けます。
 どのヒロインを選択しても展開は全く変わらず。ちょっとセリフが変わる程度です。
 しかも、やや物語の管理が甘く、既成事実がさも無かったかのように語られたり
しますし、途中のヒロインと懇ろになってもまだ後にヒロインが控えている場合、恋人
関係になったヒロインの独占欲が妙に淡白になってしまったりします。
 各章では、ほぼそれぞれの主役ヒロインに主人公が張り付く事になるので、まあゴ
ネられたらお話が進まないから仕方ないのでしょうけど。
 しかし、最初のプレイを終わらせると、残りはHシーン回収とエピローグ&エンド回収
作業一辺倒になってしまうのはかなり興醒めです。
 例えば、2章で「さち」を選んだ場合、後のm章で違った展開が見れたり、いっそ5章
仕立てにせず、攻略順を決めて、伏線のカミングアウトする5章をTRUEルートにする
等の章立ての工夫が是非とも欲しかったです。
 5章固定ストーリーは、ファーストプレイのインプレは巨大なのはメリットになるので
しょうが、2週目以降が激烈に退屈になってしまうデメリットが大きい。
 一本道ゲームの必然としてエンドも一つになり、結果的にヒロイン別エピローグも
かなり消化不良になってしまっています。
 これが一つ目のマイナス点。

 次が、5章のエンディング。所謂物語のオチの付け方。
 5章のサブタイトル 「There is no such thing as society」には合致した終わり方
だと思いますが、あまりにも淡白且つ安易な収束の仕方。
 これまでの濃密で緊迫感のあるストーリー。散々山場を持ってきてくれて、さあオ
ーラスに何が来る、と期待させておいて…。
 終わり良ければ全て良し、ではありませんが、この終わり方はかなり不満です。
 4章の掘り下げの浅さなど問題にならないくらいのガッカリさがありました。
 あれだけ完璧な敵役としてグイード・ディバイディッドの様に立ちはだかっていた
「法月将臣」、最後にこれかよ?! てな感じです。
 これが2つ目のマイナス点。

 追加で序盤で、納得できない理由で撃ち殺される「南雲」さん、哀れだ…。
 未だにこれだけは理解不能な展開です。 
オススメ度  5章の終わり方、物語の閉じ方が問題で、減点2点になりましたが、伏線の巧みさ
で1点バック。
 当サイトで書いてきた感想の中では初めて9点超えになった作品です。
 尤も、最近1年以上はプレイする本数もサイト立ち上げ時期より半分以下に減って
おり、目が肥えていないせいもあるかもしれません。
 良い意味で「やられた」久々の作品でもあり、ツッコミ所は多いがユニークな刑罰
法と物語の構築。このあたりが評価の対象です。
 我ながらちょっと甘い点数。8.5点が妥当かなと思いますけど、次回にも期待して
9点献上。

 最初の1時間を投げずに乗り越えられれば、かなり楽しめる良質ゲームだと思い
ます。キャッチーなキャラクターとはバランスがある意味取れないシリアスなお話
が読めますので、シナリオ重視の方にはオススメです。
 刑法に関して造詣の深い方は、逆に抵抗を感じるかもしれませんけど。

 何だかんだとケチを付けつつ、シナリオ担当の「るーずぼーい」氏の力量は凄いと
思い、氏が担当された同人作品2本を秋葉で速攻で買い求めてきました。かなり品
薄らしいので、入手出来て良かったです。これからボチボチとプレイしてく予定です。

  エロ無くしても良いから5章のエンドだけ大幅に改定したコンシューマー版出してく
れないかな?と切に願ってます。
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